仏教用語禁止の法話

 東京で開催されます第10回仏教井戸端トーク「お題法話-仏教用語禁止編」を拝聴する機会をいただきました。都会では仏教に関するイベントが数多く開催されています。
地方に居住する私(住職)には遠い存在でしたが、このイベントに登壇される僧侶に妙華寺の婦人会総会の日の行事でお越し頂いた僧侶がお二人いらっしゃったことで今回は時間の都合をとり上京しました。
お一人は、昨年お越しいただいた青江覚峰師てす。今回の会場寺院のご住職で「暗闇ごはん」でお馴染みですが、妙華寺では、食事を通してのご法話(お話し)は婦人会会員の皆様にとても反響がよかったです。もう一人は、一昨年にお越し頂いた浦上哲也師です。メディアでも数多く取り上げられています「死の体験旅行」を開催していただきました。私(住職)も死に行く体験がとても貴重なものとして今も残っています。お二人のお話をお聞きできることを楽しみにしていました。

Processed with MOLDIV

【昨年の婦人会総会の後のご法話の青江覚峰師】

Processed with MOLDIV

【最近のメディアに掲載されている浦上哲也師】
2017-04-20仏教井戸端トーク
 今回のイベントに参加するのは私(住職)は初めてでありますが、HPの案内を見ますと、【仏教井戸端トークの人気企画、お題法話の第3弾を開催する運びとなりました。
来場した皆さんから任意の単語を頂戴し、それを1個でも全てでも、とにかく会場から出た単語を使って法話をすること。これがこれまでのルールでした。
今回はそこに「仏教用語を使うのは禁止」というルールが追加されます!(※一部例外単語もあります)
難しい専門用語でけむにまくのは禁止、日常使用する単語で伝えること。NGワードの判断は増田が行います。
(増田は仏教用語連発で登壇者を惑わすかもしれません(笑))
また、当日は法話の前後で皆様の幸せ度がどれだけ変化するか、最先端技術を用いたマシーンも登場するかもしれません(まだこのマシーンについては未確定です)】とあり、「仏教用語使用禁止の法話」にとても興味を持ちました。

Processed with MOLDIV

 浅草の緑泉寺様へ伺うと既に受付をすまして会場の本堂に何人かがいらっしゃり、定刻までに30名ほどが本堂に集合し始まりました。私は初めてですが多くの参加者はこれまでの仏教井戸端トークに参加されているようで和気あいあいの雰囲気です。私のお寺では考えられない20代から30代40代の方々の参加と、対面に今日の法話をされます4人の真宗のお坊さん。そして今回は、法話されるお坊さんと聴聞する私たちを同時に「しあわせ」(幸福度)を計測する機械とそれを表示するスクリーンがありとても東京的なものを感じました。
聴聞する私たちからお題を5つ出して、それを使いながら、仏教用語禁止の10分の法話がスタートです。法話されるお坊さんは、仏教用語を使わないと言う点が、いつもと違い緊張があるようです。休憩を挟んで2回の法話は大変だったと思いますが会場は盛り上がっていました。「いつも読んでるあれ」で「お経」と分かるのはうれしいですね。また、4人お一人づづ法話として成り立っていながら、4人の法話がつながっていくような今まで感じたことがない法話を聴聞する機会を得たことはとても有難かったです。
終了後、「しあわせ」(幸福度)の解説があり会場がこんなに「しあわせ」に包まれている場は珍しいようと聞き、私(住職)もこんなに楽しく法話を聞いたことが無かったと思い会場を後にしました。
法話会の始まる前に、せっかく東京に行くので少し気になっていましたものがありましたのでそちらも確認に行ってきました。それは「桜餅」です。私たちの地域で「桜餅」と言うと、道明寺「餅米で包まれた」餡のものです。でも関東の「桜餅」は、小麦粉の薄皮で餡を巻いたものと聞いて一度食したいと思っていました。「長命寺桜餅店」さんでいただきましたら桜餅が桜の葉で隠れて見えません。一枚外すとクレープの皮のような薄い小麦粉の皮にこしあんが包まれていました。皮が乾かないよう大きな桜の葉で包んであるようです。こちも美味しい「桜餅」でした。

Processed with MOLDIV

和讃

 和讃をご紹介いたします。和讃について多くの参考書がありますが、『注解 国宝 三帖和讃』常磐井鸞猶著と『浄土和讃講話』川瀬和敬著より紹介します。
浄土和讃 讃阿弥陀仏偈和讃29首
たとひ大千世界に みてらむ火おも過ぎ行きて
佛のみ名を聞く人は ながく不退にかなふなり
 たとえこの宇宙を猛火が包もうとも、その満ち満ちている火の中をも突き進んで、弥陀の名号を聞き求める人は、永遠に正定聚の位を退かない地位を約束されているのだ
※大千世界は三千大世界の略。この世界の全体を言う。
※みてらむ火は「満つ」という動詞に、完了助動詞「り」と、予想の助動詞「む」が添った形。直訳すれば「満ちていよう火」となる。
※不退は不退転の略。仏道から後退しない意であるが、聖人においては、正定聚の地位をしりぞかないこと。
※かなうは 適合する意。あてはまる。
以上 【注解 国宝 三帖和讃 常磐井鸞猶著より】
 「東方偈」には「たとい大火が世界を一なめにすることがおこってきても、そこで必ずなすべきことは、その火を過ぎ超えて、法を聞くべく急がなければならない。そこにおいて必ず仏道をなしとげて、広く生死流転の激流をわたりきることができるのである」と説かれ、これに動かされた『讃偈』には「たとい大千世界に満ちみつる火であろうとも、それを直ちにのりこえて仏名を聞くべきである。阿弥陀の名を聞くならばもはや退転するということはない。このゆえに至心に稽首し礼したてまつれ」と唱和され、更に『往生礼賛』には感銘を斉うし「たとい大千に満つる火なりとも、直ちにそれを過ぎて仏名を聞け、名を聞いて歓喜し讃仰する者は、皆もろともにかの仏国に往生することができるのである」と伝承されています。
小千世界・中千世界・大千世界を総称して三千大世界といいます。われをおく世界を悉く尽くしているのです。たとい火が満ちようとも、と言ってありますが、さまざまの業火が燃えあがるのが世界の様相です。願わないけれどもわきおこる障害を火で代表します。火が迫ることがなければ、仏名を聞かんとおもいたつ時節が到来しません。火をのりこえて向こうから聞こえてくるものが仏名です。火を過ぎて仏名を聞けよ、聞くことのできたひとは、不退位にかなってながく退転しないというのです。『讃偈』の「また退かず」を自身の最も愛好される不退として受けとめられたのです。「不退にかなう」とは、不退転に住する道の閉じられたものに、聞名一つによって今や不退の位に住するに等しいとて、称賛されるめでたさです。
水火二河の譬喩というのがあります。善導の信心体験の実録です。行者が白道を一歩一歩踏みしめてゆくのに、決して無事平穏ではありません。青黒い荒波に足もとをすくわれ、一方からは猛火がふきつけます。この水火は貪瞋煩悩のことなのです。これを徹底して言い尽くされた一節が『一念多念文意』にあらわれます。「凡夫というは、無明煩悩われらがみにみちみちて、欲もおおく、いかり、はらだち、そねみ、ねたむこころおおく、ひまなくして臨終の一念にいたるまでとどまらず、きえず、たえずと、水火二河のたとえにあらわれたり」と。この大いなる見通しに遇えば、煩悩とのたたかいのはての克服というような妄想は、ふっとびます。地獄の猛火、化して清涼の風となる力によらなければ、火は燃え続けます。
以上【浄土和讃講話 川瀬和敬著より】
Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

快慶展

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

 先日、奈良国立博物館で開催されています「快慶」展に行きました。あいにくの雨でしたが、桜も満開に近く、鹿もたくさんの観光客に人気でした。「快慶」展も多くの人でした。私(住職)は快慶については、学校の日本史で習った程度の鎌倉時代の有数な仏師の一人としか知りませんでしたが快慶の作った代表的な多くの仏像を拝見できた喜びを感じました。また阿弥陀信仰者としての生き方も快慶の仏像を多くの方々が求めた一因になるようです。
 近年高田本山専修寺の如来堂のご本尊である阿弥陀如来立像も、調査により快慶が作った特徴が顕著に認められ、また光背や台座もきわめて入念な作技で素晴らしいものとあり、私(住職)には、より快慶に親しみがもてました。
 また、「快慶」展が終わると源信の1,000年忌特別展として「源信 地獄・極楽への扉」展が予定されているようです。源信(げんしん)は大和(奈良)出身で、天台教学を修め、比叡山横川(よかわ)の恵心院に住したので恵心僧都とも言われています。『往生要集』を著し、あらゆる衆生のため穢土を厭離して阿弥陀仏の浄土を欣求すべきことを勧めました。親鸞聖人は七高僧の一人として尊ばれた方です。展覧会では、源信の影響下で生まれた名品を紹介されるようです。こちらも拝見したいと思っています。
Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

寺報に見る住職の10年の歩み 平成24年

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

寺報に見る住職の10年の歩み 平成24年
【寺報31号平成24年12月発行】
『御遠忌法会を終えて
 妙華寺では平成23年11月に、高田本山では今年の4月に賑々しくお勤めをいたしました。檀信徒の皆様にはご参詣を賜り大変ありがとうございました。改めて親鸞聖人のご遺徳を振り返る勝縁でしたが、御遠忌法会を終えても聖人の「み教え」を深めていきたいと思います。それには自分自身のあり方をもう一度省みることにつきます。私自身がどれ程自己中心の生活をしているのか。このような私にかけられている仏の願いに気づいているのか。そしてこの仏の願いを生涯をかけて尋ねていくことであり、仏縁に遇うことのできた喜びをかみしめ人生を歩んでいきたいと思います。』
 50年に一度の大きな法会を終えた高揚感とこれからの自分の歩みを確かなものとして歩みたい希望を綴りました。
 この年(平成24年)の12月17日に、私(住職)に高田本山の事務方としてのあるべき姿をお教えいただいた岩田光正師がご往生されました。岩田師は前住職が親しくしていただいていた関係もあり、また高田本山専修寺御影堂平成大修理事務局での局長で、私(住職)の上司として多くの事をお教えいただいたことに感謝しています。その岩田様のお寺を嗣がれる(住職拝命されました)お孫さんに今年の本山のお七夜でお会いすることができました。(お孫様の得度の時の岩田師の笑顔がとても素敵だったこと覚えています)
毎年4月に入りますと境内の桜もきれいに咲きますが、今年は開花が遅かったにもかかわらず、暖かく2、3日で満開になりました。メリシャカ(花祭り)はあいにくの雨模様でした。土曜日には、お同行様もお花をお持ちいただきお供えさせていただきました。
1月下旬から、本堂の空調並びに境内墓地の通路整備を行っています。お同行の皆様には、大変心苦しいことですが、年末までに御志としてご寄付をお願いすることになりました。よろしくお願い申し上げます。また、工事中お墓参りでご迷惑をおかけする場合がございます。
※寺報に見る住職の10年の歩みは、毎月10日に掲載いたします。
Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

境内墓地の通路整備の報告(3月)

本堂の空調設備の設置と境内墓地の通路整備の報告(3月)
 境内墓地の通路整備は、墓地の奥にあたる北西側から通路ごとに順次舗装版を整備しています。3月までの予定は一区画でしたが、二区画の途中まで少し早く作業が進んでいます。
ご迷惑をおかけしますが、境内墓地通路整備期間中の東側駐車場の一部を工事車両が使用します。
また、皆様のお墓の前の通路に花入れなどがございましたら申し訳ございませんが片付けさせていただくことになります。
Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

3月のおてらおやつクラブ

3月のおてらおやつクラブ
今月は、春彼岸会の翌日に発送いたしました。毎月一度のおてらおやつクラブで発送で苦慮するのが消費期限の短い期間のお供えや果物です。発送日直前にそのようなお供えいただく時はお送りさせていただきますが、実現できない場合が多いです。今回は一人親家族様へはお彼岸のお供えで消費期限の短いお菓子をお送りさせていただきました。
また支援団体様からは、4月の総会でお菓子をお配りしますとお礼の連絡がありました。
 また、年2度の古本勧進での古本も募集しています
次回は8月末までに集まった古本を寄付させていただきます。
不要になりました古本がありましたらいつでもお寺にお持ち込みください。
対象の本は、裏表紙にバーコードのあります文庫本・新書本・単行本です。
申し訳ございませんが、週刊誌・雑誌・百科事典・全集は対象外です。
本以外、書き損じのハガキ・不要なCDも受け付けています。
2017-03-21支援団体・一人親家族②IMG_3733
2017-03-21支援団体・一人親家族へ①IMG_3732
Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

和讃

 和讃をご紹介いたします。和讃について多くの参考書がありますが、『注解 国宝 三帖和讃』常磐井鸞猶著と『浄土和讃講話』川瀬和敬著より紹介します。
浄土和讃 讃阿弥陀仏偈和讃24首
若不生者の誓いゆへ 信楽まことに時至り
一念慶喜する人は 往生かならず定まりぬ
  迷える人を救い得ずば我も仏にならじとの弥陀の誓願の故に、ようやく信心の開ける時がめぐり来て、信じ得た喜びに浸る人は、浄土への往生が誤りなく決定(けつじょう)している。
※若不生者は、第18願に「若不生者 不取正覚(もしうまれずは、正覚を取らじ)」と誓われたことを指す。
※信楽は、聖人の自釈(尊号真像銘文)に「信楽といふは、如来の本願真実にましますを、二心なく深く信じて疑はぬ」こととある。
※一念慶喜は、一たび思念する意味から極めて短い時間を指す。ここでは信の一念の意で、信心を得て念仏せんとする一瞬の心の動き。その時湧き上がる喜びが一念慶喜。以上 【注解 国宝 三帖和讃 常磐井鸞猶著より】
 「若不生者 不取正覚」は、およそたぐいまれなる金言です。正覚者なればこそ、言えることばであり、正覚の本質を語り尽くしています。汝がなければ我はない、汝によって我が成り立つのが、正覚者の極意です。正覚者の誓願はすでに成就されているがゆえに誓願なのです。もし誓願がなければ一切は止み世界は崩れますが、そうさせないのが誓願です。誓願は時機を待ちます。衆生には必ず誓願の開ける時がきます。悪戦苦闘の果てにふっと訪れます。信心がまことでなければなりません。まことの心である至心信心が呼びさまされます。はっと気づいたのが一念です。それは私の考えている時間ではないのです。永劫の時間ととろけあうような、如来の時間というべきものです。私の考えている時間ならば、それが過ぎ去ることに痛みを感ぜしめます。消えていくようないのちでなく、時を与える如来のいのちのふき出したものが一念です。一念はとらえられませんが、無量寿としてのよろこびです。如来の誓いが信を通してよろこびとなった人は往生者としての必至の約束ができたのです。
誓いが成就しているのですから、往生も成就しています。臨終を待つには及びません。往生は今においてあるわけですが、「往生定まりぬ」として、今と言わぬところが、宗教性の奥床しさです。その時が来るまでお預けというのでなくして、後の時に譲りつつ、今それがあるというよりもっとたしかなのです。定まったのが今であるから確認ができるのです。
以上【浄土和讃講話 川瀬和敬著より】
Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

シンポジウムと講演会

先日、『教行信証』のこころをひらくと題する、シンポジウムと講演会がありました。
最初にシンポジウムで「『教行信証』と門弟の書写」と題した、親鸞聖人の著書である『顕浄土真実教行証文類』の板東本・高田派専修寺本・西本願寺本の3つの『顕浄土真実教行証文類』を通して書誌学の面からパネリストの清水谷正尊師と田中真英師から意見が述べられました。続いて、「写本として見た板東本『教行信証』」の講題で宇都宮啓吾氏が講演されました。3つの『顕浄土真実教行証文類』がどのように伝わってきて、これまでの調査で解ったことの経緯と最新の調査結果をわかりやすくお聞かせいただきました。
後7年後に迎える立教開宗800年に向けもう一度聖人の主著である『顕浄土真実教行証文類』の研究が進められているのだと感じました。
現在の私たちは本と言えば書店で求めることも、図書館でも借りることができますし、インターネット上で調べたり閲覧・コピーもできたりして身近と言うのか当たり前の存在ですが、親鸞聖人在世の頃は、師の直筆の本を、お借りして、自身が筆で紙に書写することでしか手元に残すことができなかったので今とは違うご苦労があったのと同時に書写を許されたことへの喜びもとても大きなものであったと感じます。書写して装丁された一冊の本を詳細に研究して解ってくる知見を教えていただいた学びの時間でした。
※中川個人の感想です。

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

 

東日本大震災から6年

東日本大震災から6年
平成23年にご往生されました方は、仏教では7回忌としてお勤めされます。7回忌のお同行様でのお勤めの時に東日本大震災のことが話題になります。私たちの地域は、被災地から離れているのでTVや新聞の報道されたことからの情報しか持ち合わせていなくて申し訳なく思うこともありますが個々の中で忘れることのできない出来事の1つであると思います。3月11日にご往生された方の7回忌をお勤めしました。松阪市にお住まいのご高齢の方ですが、その日の東日本大震災(地震)に驚かれご往生されたそうです。ご家族はそのことをとても気にされていました。どのように受けとめるかはそれぞれですが、ご往生されました方のご一生に「ありがとうございました」と手を合わさせていただくことから残された私たちのご聴聞の歩みが始まることを感じました。
Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

 昨年の6月に私(住職)は、東日本大震災で被災されました方のお話しをお聞きさせていだくご縁をいただきました。
既にお寺のHPでも掲載させていただきましたが改めて再掲させていただきます。
【お寺のHP掲載文】
グリーフケア公開講座6回は、東日本大震災で被災されました気仙沼のご遺族の菅原文子さんに、龍谷大学の鍋島直樹先生がお話しを聞く対談形式でした。菅原文子さんは家族で営んでいたお店で、ご主人とご主人のお父さんお母さんの3人を津波で一瞬に失われました。2階にいた文子さんが1階にいたご主人を迎えに行き、手を取り合った瞬間にすさましい勢いの波にのまれて文子さんの目の前から消えたそうです。そして翌朝、自宅の2階のベランダからヘリコプターに手を振り続けて文子さんは救助されました。「助けを求めていると言うより自分がここにいるよと誰かに知ってほしかった」と話されました。息子さんとも前日から連絡が取れなくなったようですが救助された日に再会でき、涙が出て、夫を亡くした悲しみがあふれてきたそうです。しかし、大きな震災でしたので、悲しみはあなただけではなく、みんなだから泣いてはいけないように思われたそうです。その年の夏に行方不明の夫はまだ発見されず悲しみが爆発しそうになった頃に震災直後から支援されていた方から、「手紙を書いてみたら、書くことで癒やされることもあるよ」と進められ、泣きながらあふれる想いを、夫への恋文として綴られた手紙が、京都市の柿本商事が企画された手紙コンクール「KYOTO KAKIMOTO 恋文大賞」に選ばれました。それがご縁で鍋島先生は、菅原さんご家族と交流が生まれたそうです。大震災から1年3ヶ月後にご主人が倒壊家屋の中から発見されたと文子さんから連絡があったそうです。文子さんのご家族には悲しいことに違いありませんが、ご主人と再会できたことは本当によかったことと思えたそうです。
ご主人の3回忌の法要で「無常は希望」と言うご法話をお聞きされ、ご子息様が「悲しみに向き合う」ことができ救われたお姿を見て、文子さん自身か救われたと感じられたそうです。また、自分の中にある悲しみが今の自分のバランスをとっていると感じられていることが私(住職)には印象的でした。大震災から5年が過ぎた今、町並みは変わりつつあり目に見えて復興しているように見えるけれど、被災された方々の目に見えない「こころ」は不安だらけであるようです。いまだ行方不明の方が220名いらっしゃるそのご家族のお気持ちにも寄り添える支援が今後も継続されるように感じました。
 私(住職)にとって、大震災のご遺族からお話しを直接お聞かせいただきましたことは、初めてで本当にお聞かせいただきありがとうございますとお礼を申すことしかありません。菅原様が体験されたことをその時のご自身の言葉で語ることはとても大変で勇気がいったと思いますが、書くことによって爆発しそうな「悲しみが」多くの方に伝わる中で変化していくことや、「悲しみ」と向き合うことになる色んなご縁に感謝するお姿に感じ入りました。「悲しみを生き抜く力」が私たちの中にあることに気づかされました。
※中川個人の感想です。

寺報に見る住職の10年の歩み 平成23年

Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV

寺報に見る住職の10年の歩み 平成23年【寺報30号平成23年12月発行】
『襷(たすき)
毎年お正月の箱根大学駅伝をテレビで声援している。私自身が走った経験もないし、参加校の卒業生でもない。ひいきのチームがあるわけでもないがテレビに釘付けになることも多い。どこにひかれるのか多くの方々も同じと思うが、仲間との絆と思う。その絆の象徴が、襷(たすき)である。今走っている走者が次に走る走者に襷をつなげる時の瞬間に感動を覚える。私は、走った経験もないと書いたが、妙華寺の住職として考えると、親鸞聖人のみ教えをこれまでの住職や先達から託されて今の場に立っている。このことは、お同行の皆様も同じように皆様の先代から託されこの場に立たれている。そう思うと、自分に託された親鸞聖人のみ教えを次の世代に襷をつなげるようにしっかり今を歩んでいきたい。』
この年(平成23年)の3月11日の東日本大震災は、私(住職)の中で忘れることができない1つの出来事です。阪神大震災の時には無かった津波での被害を見て、僧侶としてまた一人の人間として何ができるか思うことがあります。また11月に妙華寺の親鸞聖人750年御遠忌法会を、お同行の皆様方と共にお勤めできましたことも忘れることができない1つであります。その時の思いを「襷」という文章で綴りました。
3月はお彼岸の準備や4月のメリシャカ(花祭り)に思いを馳せたり、気候も暖かくなるなかで境内に出る時間が長くなります。山門の近くにあるしだれ桜の1本が枯れました。庭師さんの話では、境内地は土が粘土状で樹木には適さないようです。それでも多くの樹木が境内にあることは有難いことです。
1月下旬から、本堂の空調並びに境内墓地の通路整備を行っています。お同行の皆様には、大変心苦しいことですが、年末までに御志としてご寄付をお願いすることになりました。よろしくお願い申し上げます。また、工事中お墓参りでご迷惑をおかけする場合がございます。
※寺報に見る住職の10年の歩みは、毎月10日に掲載いたします。
Processed with MOLDIV

Processed with MOLDIV