本の紹介

今月の本
『仏典を読む』末木文美士著 角川ソフィア文庫
私(住職)は、コロナ禍の昨年1年、時間は同じようにあったのに本を読みたいと思う気持ちになりせんでした。老化現象で小さい活字が読みづらく、根気もなくなると、本を読むことから遠ざかっていくようにも感じています。
およそ1年ぶりに『仏典を読む』と題する本を手に取りました。私(住職)の中で著者の末木文美士氏の著書は、これまでの著書も含めて、仏教の見方を変えるくらい刺激があります。
私は仏教全体のことまで詳しく勉強していませんが、浄土教の部分から感じることは、インド・中国から日本に入ってきた仏典を通してこれまで私が受けとめている仏教史観をもう一度書きかえる著書と感じています。
私の時代に習った仏教や日本史での鎌倉時代の新仏教の位置づけが、既に平安時代の顕密仏教の周辺であったことに変化しています。そして、これまでの顕密仏教や新仏教の枠から飛び出した実践仏教のようなことも気づく事ができました。

著者の「他者」の概念は「死者」を含め、更に自己の中の他者にまで踏み込んでいます。普通考えています自分以外の生きている他者の概念よりより深いように感じます。真宗ではあまり論じられていない菩薩(行)についても、六道輪廻の中での菩薩(行)として考えさせられ、親鸞聖人の著書からも菩薩(行)を語られています。親鸞聖人の著書『教行証文類』は法然聖人の『選択本願念仏集』に語られていない部分に踏み込んだ著書と改めて気づかさせていただきました。日本仏教を土着的な面と仏教のあるべき面と二面的に捉えて考察する視点もありますが、そうでなく複合的な捉え方を視点としてもう一度仏教を見ていくことなど私(住職)の中で刺激が続いています。※中川個人の感想です。