葬送仏具

【野仏】

葬送仏具
妙華寺では、葬儀の時、「野仏」と「野袈裟」と言われる高田派の葬送仏具を用意しています。
「野仏」は、「野袈裟」と共に葬儀で使用する掛軸で、阿弥陀如来が描かれていて、葬送の時の本尊として扱っています。形式はいろいろあるようで、妙華寺の野仏さんは、三尊仏が描かれた掛軸です。

これまでは、自宅での葬儀が多く、仏間と隣接する部屋の襖を取り払い1つの空間として葬儀をおこなっていました。私の知る昭和50年代頃からは葬祭業者の立派な祭壇を設え、その中央に「野仏」を掛け葬儀を行っていました。

今の葬儀は、殆どが葬儀会館で行われ、葬儀会館が自前で各宗派のご本尊を用意されている場合もあり、妙華寺の「野仏」は掛けられない(使われない)時もあります。

「野袈裟」の方は今も棺の上に掛けて使われています。

「野袈裟」は、僧侶が着用する袈裟を模したもので羽二重でつくられています、100cmから120cm四方の布の中央に「南無阿弥陀仏」 向かって右側に「其仏本願力 聞名欲往生」向かって左側に「皆悉到彼国 自到不退転」と揮毫した高田派の法主の名と下付された寺院名や年月日が書かれています。

「野袈裟」は、高田派の10代真慧上人が伊勢に入られた頃、生み出され、高田派の一部の地域のお寺で今も使用されています。
葬送の場所に「野仏」(掛軸)を掛け、ご遺体の上に「野袈裟」を掛けたり、棺の場合は、棺の上に「野袈裟」を掛け、「棺腰巻」と言われる「野袈裟」と同様の布で棺を覆い、荘厳されたのでしょう。

※「棺腰巻」は、妙華寺には、伝わっていませんが、伝わっている寺院では、「光明遍照 十方世界 念仏衆生 摂取不捨」「願以此功徳 平等施一切 同発菩提心 往生安楽国」が記されているようです。

私たちが今行っている葬儀の形と真慧上人時代(1500年頃多くの「野袈裟」を書き与えた頃)の葬儀の形は違っていたと思いますが、どこがどう違っていたか、私(住職)には想像することもできません。
葬送の場所も、三昧や墓地の屋根がないところだったかもわかりません。僧侶が参加していたとは思いますが定かではありません。簡素な形であっても亡くなられた方との別れを大切にしたい思いがあっての葬送仏具であると思います。

【野袈裟】