お寺の掲示板

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「死ぬとは、死に拘るのをやめることだ」

『なにものにもこだわらない』 森博嗣著

「こだわる」ことは本来良い意味でないが、近頃は特別の思い入れがあることにも使う。

著書の帯に、「拘ることの最大の欠点は、思考が不自由になることであり、思考が不自由になると、思いつく機会が減るし、また問題解決できにくくなる。こうなった人は、いつも周囲の誰かを頼ろうとするし、最近であれば、ネットで検索しようとする。自分の頭の中で問題を展開さえしない」と、今の時代の「拘る」ことについて発言している。

著書には、
・「生」に拘ることも「死」に拘ることも生きているからで、生きているものだけが、死を予感し、死を恐れ、あるときは死を選ぶ。死者は、なにも予感せず、なにも恐れず、そして選ぶこともしない。
・死に拘れるのは、生きているうちである。だから、死とは、死に拘ることをやめたときに訪れる。それは、死を受け入れる、という意味でもある。
・生と死は、表裏一体でどちらかで存在する概念でない。
など、「死」についての「こだわり」の視点から著者の考えを述べている。

私(住職)は、「こだわり」の視点から「死」を考えることは無かったので著書を興味深く拝読した。「死」に限ったことではないが、どれだけ自分の中の「こだわり」を捨てようとしても、自分の考えはどうしてもある「こだわり」からは逃れることができないのが凡夫だと思う。