お寺の掲示板

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悲しみは消えることがない、「慣れる」だけである

『人は人を救えないが、「癒やす」ことはできる』 谷川洋三著から

著書では続けて、「死別の悲しみは、残念ながら一生消えることはありません。現実を受け入れ、日常生活を取り戻していくことが一つのゴールになります」

どうすれば死別の悲しみを癒やされるかと聞かれることがありますが、残念ながら悲しみそのものは一生消えることはないようです。大切な人を亡くした後、遺された人が目指す一つのゴールを設定するならば、「日常を取り戻す」ということでしょう。これは、亡くなった人を忘れるという意味ではありません。むしろ、「亡くなった人と一緒に生きていく」ということになるのだと思います。
肉体を失ってしまったので、これまでのように触れたり、会話をしたりすることはできません。その変化を受け入れるには時間がかかるでしょう。ただ、頭の中や心の中には存在していますので、一緒に生きていくことができるのです。
大切な人の死を乗り越えるというのは、そんな関係性の変化に慣れて、日常を続けていくということです。

※話が少しそれますが、仏教では中陰(49日)と呼ばれる時間があります。中陰(ちゅういん)は中有(ちゅうゆう)「輪廻を繰り返す中で生命あるものが死んで次の生をうけるまでの時間」や故人が亡くなって49日間のことなどの説があります。真宗では命終わると往生しますので、追善供養でなく、故人の死を縁として仏法に遇い、阿弥陀如来に等しく摂取される恩徳に報謝する時間とも言われます。私(住職)は、大切な方が亡くなられた時に受け入れがたい悲しみや苦しみを現実として受け入れる時間として49日があるのだと思っています。それは関係性の変化を受け入れる時間ではないでしょうか。