今回のグリーフケア公開講座の最後の講座です。島薗進氏の「悲しみから生まれる力 東日本大震災後を生きる」のお話しです。島薗氏は、スピリチュアルケア、グリーフケアに長年携われていらっしゃいます。東日本大震災が起こった時には、現地での宗教者の活動がバラバラな活動でなく情報を共有することでより宗教者の活動が拡がるよう宗教者災害支援連絡会を立ち上げられました。この取り組みは、阪神大震災やJR福知山線の事故、中越地震などこれまでの宗教者の支援が、より良い支援にできないかという思いと、これまでの東北での自殺予防の取り組みをされていた方々や、在宅介護での看取りをされていた医師の思いを含めた新しい試みでした。東日本大震災の現地での宗教者の活動は、これまであまり取り上げられなかったマスコミにも取り上げられるようになります。ここには、東北地方の豊かな宗教的な地域性と、これからの日本で何が起こるか分からない時代の不安も関係があると感じます。特定の宗教を信じていない現代の私たちは、宗教に何を求めているのか難しい問いですが、日本人の感じる、死者と生者の関係性に注目できるのではと話されました。今ではあまり肯定的に論じられない日本のこれまでの家制度には、縦の関係を大切にした中に、死者と生者が共にいる関係や、自分の後の世代を慈しむ思いなどを窺い知ることができるようです。深沢七郎氏の『楢山節考』を読むと涙を流してしまいますがそこには、生き残るものへの慈しみがあり、読者は悲しみの追体験をして分かち合うことで、悲しみから生まれる力をいただいているのだと話されました。これからの時代に、スピリチュアルケアやグリーフケアがこの日本にしっかり根をはることができるかは、東北大震災後の宗教者の新しい活動としての臨床宗教師構想にあると注目されています。
※中川個人の感想です。
5月から始まった8回のグリーフケア公開講座のすべてに参加できませんでしたが、それぞれのご講師が取り組まれているグリーフケアについてのお話しをお聞きでき、学ぶものが多くありました。
最後に、9月から12月まで8回のグリーフ ケア公開講座『悲しみを生き抜く力』のチラシをいただき、次回も各方面でご活躍されていますご講師の悲しみを見つめながら生きることの意味を共に考えるお話を楽しみにお聞きしたいと思います。