ひとくち法話

お寺に太子のお軸があるわけ

親鸞聖人は、修行が行き詰まると、聖徳太子のご示現におたずねされたという記録が残っています。
その1は、19歳の時に太子の御廟である磯長(しなが)に参籠(さんろう)されたという記録です。2日目の夜に「親鸞よ、諦(あき)らかに聞きなさい。汝の寿命はあと十余歳です。命終わったら速やかに浄土に往生させましょう」というきびしいものでした。聖人はおどろいて、心を新にして再び比叡山に登って修行に励まれました。
その2は、29歳の時です。いよいよ修行に行き詰まって、太子の創建といわれる京都の六角堂に籠(こも)られて、太子のご示現に賭けられました。その95日のあかつきにようやく太子が観音菩薩の姿であらわれて、「後世(ごせ)のことは、法然上人を訪ねなさい」ということでした。
このように聖人は「和国の教主 聖徳王」(前項参照)、つまり聖徳太子は、日本のお釈迦さまですと尊崇(そんすう)されて、『皇太子聖徳奉讃』という和讃を百首程もお作りになっております。
そこで、真宗のお寺には、この聖人のお心をいただいて太子のお軸を掛けているのです。
註 ご示現とは、「仏・菩薩が衆生(しゅじょう)救済」のため、いろいろ姿をかえてこの世にあらわれること」

※妙華寺では、本堂向かって右余間に聖徳太子の像を荘厳しています。