12月の日曜学校

Processed with MOLDIV

12月の日曜学校も「絵解きってなあに」から紹介しました。
ありがたい方々の「絵解き」
仏教の歴史上には、その時代の思想や文化に大きな影響を与えた「ありがたい方々」がたくさん登場します。今で言うカリマス的な人たちです。かつて人々は、「ありがたい方々」を、仏さまや神さまと同じように篤く敬いました。例えば、仏教を日本の国教に定めた聖徳太子が、救世観音の化身として崇められ、また東大寺の大仏造営に活躍した行基が、菩薩と称えられたのは有名です。人々は彼らが亡くなってからも、その生涯を後世に語り継ぐために、伝記をまとめ、絵に表しました。絵で表した伝記を「絵伝」といいます。特に鎌倉時代には、法然聖人や親鸞聖人など、新しく宗派を開いたお坊さん、すなわち、祖師に対する信仰が高まり、祖師絵伝が競うように作られました。絵伝の「絵解き」を聞くことで、宗派の成り立ちを学んで、信仰の思いを一層深めたわけです。

お寺と神社の「絵解き」
お寺や神社の成り立ちやご本尊の霊験、過去にそこに起こった出来事を知れば、きっとお参りしたくなるでしょう。またせっかくお参りにこられた方々には、ぜひともちゃんと由緒ゆかりを知って帰ってもらいたいものです。どうやってそれをお伝えしたのでしょうか。まず絵巻物です。説明に文章だけでなく、見どころ聞きどころを描いた挿絵が魅力的です。大人数を相手にするならば、小さい絵巻物よりも大きな絵が便利です。境内の見どころを一目で説明できる参詣曼荼羅や、本尊にまつわる物語を詰め込んだ縁起絵は、文字による説明はないけれども、「絵解き」によって次々と魅力ある話が聞けることでしょう。そして、特別な姿のほとけさまにも注目です。普通とはちょっと違う手の形や持物、光背や台座の意匠は、特別な霊験をもつほとけの目印です。片手に地蔵菩薩のような錫杖を持ち、盤石をかたどった四角い台座に立つ十一面観音ならば、長谷寺の本尊。千手観音の中でも、左右の一番上の手を頭上に重ねて如来像を載せているのは、清水寺のご本尊、といった具合。いまよりずっと旅することが難しかった時代。ぜひとも霊験あらかたなほとけを拝みたいという思いは、特別な姿を写した像を造ることにもつながりました。

旅する「絵解き」
諸国を旅した「絵解き」は「熊野比丘」と呼ばれた尼さんたちです。彼女たちは熊野観心十界曼荼羅や那智参詣曼荼羅などの「絵解き」をしながら街から街へと旅していました。「絵解き」することで熊野三社へのお参りを勧め、お金を集めるのが彼女たちの主な仕事です。集めたお金は、寺社の運営や修善の費用に充てられました。こうした活動を「勧進」といいます。そして、お金をくれたお客さんには、霊験あらたかなお札・牛玉法印など、熊野ゆかりの品々をプレゼント。絵画の中の描かれて人たち、みんな本当に楽しそう。こんな作品の「絵解き」を聞いたら、きっとあなたも旅に出たくなっちゃいます。
今を生きる「絵解き」
人がだれかに物語る。それはいつの時代の誰にとっても、「いま」「ここ」で起こる出来事です。2つの角度から、今につながる「絵解き」のその後をお伝えします。
ひとつめは、「絵解き」された物語が、狭い意味での絵解きの枠を離れ、さまざまな分野に進出していくという動きです。今でも人気の小説がね映画やアニメになったりしますが、昔から同じようなことがあったのですね。とりわけ人気が髙かったのは、道成寺縁起です。「絵解きの」物語が他の分野に進出していった早い例である能と、その能に題材をとって演出を加えていった歌舞伎があります。人気の役者が演じる歌舞伎の舞台は、さらに浮世絵などななって広まっていきました。
ふたつめは、いまなお語り継がれる「絵解き」人が肉声で語り聞かせることの魅力は、人と人を繋ぐものとして、観光や町おこしの面でも今新たに注目されています。

※今日12月3日の報恩講では、西余間(本堂の向かって左の余間)に4幅の親鸞聖人絵伝を掛けます。ご法話終了後に、間近に見ていただくことができます。
※妙華寺では、『お寺で体験』の講座で12月24日に親鸞聖人絵伝、2月25日に涅槃図の絵解きを予定しています。