ひとくち法話

―お釈迦様のご生涯―
10王舎城の悲劇(おうしゃじょうのひげき)
王舎城はインドの東部にあるお城です。2、300メートルの高さの岩山で、その城壁は今でも残っています。この王舎城で大変な悲劇がおこったのです。
王舎城等を中心にお釈迦(しゃか)さまの弟子は数え切れないほど増えてきました。その中に提婆達多(だいばだった)という人がいました。お釈迦さまの従弟にあたり、頭の鋭い反面、嫉妬心が強く、教団を乗っ取ろうと企み、お釈迦さまを亡き者にしようと恐ろしい計画を立てました。山から岩を落としたり、象に酒を飲ませて踏み殺そうとしましたが、いずれも失敗しました。
そこで、王舎城の頻婆娑羅王(びんばしゃらおう)と韋提希夫人(いだいけぶにん)に阿闍世(あじゃせ)という王子がいるのに目をつけた提婆達多は、その出生にまつわる指の傷が、父王があなたを殺そうとした証であるとそそのかしたのでした。
怒った阿闍世は直ちに父王を牢に入れ死を待つことにしました。しかし、一向に亡くなる気配のないことを不審に思って牢番に尋ねると、夫人が隠し持った食物をしばしば運んだことが分かり、母といえども我が敵であると剣を抜いて殺害しようとしましたが、大臣や侍医にいさめられ、やむなく母も王宮の奥深く幽閉したのでした。
韋提希夫人は阿闍世を産んだ宿業(しゅくごう)の深さを嘆き、身悶えながらお釈迦さまに救いを求めました。そこでお釈迦さまは夫人や未来悪世の衆生のために、極楽世界に生まれるための様々な方法があること、しかし最も大切なことはお念仏を喜ぶ身になることだと教えられました。この教えが『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』であります。
※「ひとくち法話」真宗高田派本山より