ひとくち法話

―お釈迦様のご生涯―
08最初の説法(さいしょのせっぽう)
梵天(ぼんてん)(天の神の代表)の強い勧めにより、お釈迦(しゃか)さまは7週間にわたる菩提樹(ぼだいじゅ)下の法悦(ほうえつ)のあと、いよいよ教化伝道(きょうけでんどう)の旅に出られました。35歳の時であります。教法を説く最初の相手を誰にするか。かつて苦行(くぎょう)を共にしていたが、お釈迦さまの苦行放棄を堕落(だらく)と勘違いして去っていった5人に思い付かれました。
ガンジス川を渡りベナレスの町外れ鹿野苑(ろくやおん)に着かれました。5人は、はじめお釈迦さまを堕落僧として無視しようとしたのですが、お釈迦さまの堂々たる威容に接し圧倒され、しらずしらずのうちにひざまずき、み教えに耳をかたむけはじめました。
お釈迦さまは5人に向かって説かれました。
「人間は老い病み死んでいく。すべての存在するものは、因縁(いんねん)によって生まれ、因縁によって移ろい変わってゆくものだ。人間が本当の幸福に到達する道は欲望を捨て、自分に対する執着(しゅうちゃく)を棄て、清らかに生きることだ。私が苦行を棄てたのは決して世俗に還ったのでも、精進努力を怠ったのでもない。私が覚(さと)れる法をあなたたちに教えるでしょう。教えられた通りに行えば出家の目的は達せられて無上の覚りを得ることができるでしょう」と。ここで、5人はいよいよお釈迦さまの説法に随喜(ずいき)し弟子となりました。
この説法を初転法輪(しょてんぽうりん)といいます。転法輪(法輪を転ずる)とは、法を説くことで、教えの輪がだんだんと世の中にひろまっていくことをいいます。それが最初の説法でした。
※「ひとくち法話」真宗高田派本山より

OLYMPUS DIGITAL CAMERA