ひとくち法話

―お釈迦様のご生涯―
07梵天勧請(ぼんてんかんじょう)
インドでは、さとりを開いた人を仏陀(ぶっだ)(ほとけ)といいます。お釈迦(しゃか)さまが仏陀となられました。
縁起(えんぎ)の法則があらゆる変化、現象のもとになっている。人間はすべて老い、病み、死んでいく。これも縁起の法則によって変わっていく姿なのだ。また、苦の原因がどこからくるのか。貪欲(とんよく)(むさぼり)、瞋恚(しんに)(いかり)、愚痴(ぐち)(おろかななげき)の三毒(さんどく)の煩悩(ぼんのう)もまた、縁起の法則に依って起きてくるのだが、これを人間自身の力で失わせるかどうか。ここまで確かな実証の裏付けがないと人間の救いはありえない。果たして自分の力でできるかどうか。たとえできないとしても仏陀は、この縁起の法を自分だけにとどめておけるものではない。すべての人々に伝え、浄土に救いとるのが仏陀の役割ではないか。
お釈迦さまは、仏陀となられてからも、7週間という長い間瞑想(めいそう)を続けて、仏陀としての使命についてお考えになったといいます。
「自分が悟った真理は、非常に奥深く、極めて難しい。たとえ人々に説いても、理解する者はほとんどいないだろう。」と躊躇(ちゅうちょ)していると、梵天(ぼんてん)(天の神の代表)が現れて、「真理はいかに難しくても、それを理解するものは必ずいます。どうか、真理を説いてほとけになる道を明らかにしてください。」と頼みました。これを「梵天の勧請」といいます。
そこで、仏陀は、この梵天の声に強くゆり動かされて、ようやく立ち上がり、以後45年間の苦難の多い伝道の旅に出発されることになりました。
※「ひとくち法話」真宗高田派本山より